皆さん、ご入学、おめでとうございます。このように多くの国から多くの学生が入学してくれたことをうれしく思います。
新年の新聞を見ていたら、とてもいい言葉を見つけました。それは、
The end depends upon the beginning.
という言葉です。意訳すれば、「よい結果を得たかったら、初手を間違えてはいけない」、すなわち、「何事も最初が肝心」ということになるでしょうか。
「終わりよければすべてよし」ということわざもあります。よい結果が得られれば、その途中のミスや苦労などは消し飛んでしまう、結果がすべてだ、という意味です。でも、そのよい結果を手にするためには最初の一歩をいかによい形で踏み出すかが何より重要だと、先ほどの言葉は教えています。
昨今の世界情勢を見ても、確かにその通りだと思います。今、世界の耳目を引いているギリシアの財政危機も、ギリシアがユーロに加盟したその年に、間違った方向に歩みを進めてしまったがために引き起こされたと言ってもいいでしょう。2000年にギリシアがユーロに加盟した時の条件は、財政赤字を対GDP比3%以内に抑えるというものでした。しかし、ギリシアは、歳出削減などの正当な方法でこの条件を達成しようとせず、粉飾決算という道を選んでしまいました。それが積もり積もって、ついには覆い隠せなくなり、世界の経済を揺るがす事態に陥ってしまったわけです。
昨年の日本の原発事故もまた然りです。原子力発電は、原理的にはすばらしい発電方法です。反応式を見る限り、これですべてのエネルギー問題が解決できるとさえ思えてきます。資源小国である日本がこの発電方法に目をつけたのは、決して間違いではありません。しかし、物事には必ず表裏の両面があるという基本中の基本を忘れて、原子力発電の負の側面を見ようとせずに前進し始めたところに問題がありました。政治家も官僚も国民も、みんな夢のエネルギーの熱に浮かされていたと言っても過言ではありません。組織は、大きくなればなるほど過ちを正すのが難しくなります。一歩目をおかしな向きに進めてしまい、いつしか軌道修正できないところまで来て、そのまま突き進むしかなく、昨年の3月11日を迎えた、これが昨年の原発事故の根底をなすものです。
皆さんの留学についても同じことが言えます。この留学を成功させたかったら、心して最初の一歩を踏み出してください。もちろん、最初の一歩が正しく踏み出せたからといって、自動的に留学の成功が得られるわけではありません。数々の誘惑やトラブルが皆さんを待ち受け、襲い掛かってくることでしょう。成功の果実は、それらをはね退けていった先にあります。私たち教職員は、皆さんが留学の成功に向けて正しい道を歩んでいるかどうか、いつもどこかで見守っています。ですから、悩みや困ったこと、あるいは辛いことなどがあったら、遠慮なく相談に来てください。私たちの方から声をかけることもあるかと思います。そのときには心を開いて私たちの話を聞き、私たちに何でも話してください。
今日の話の最初の言葉をもう少し大きな枠組みでとらえると、その人の人生は若い時にどれだけしっかり勉強したかで決まる、ということも意味しているのだと思います。これからKCPで、日本で過ごす一日一日が、皆さんの人生の基礎を築くのです。1分1秒たりとも無駄にすることなく、密度の濃い留学生活を送っていってください。この留学は、皆さん自身の長い人生における第一歩でもあるのですから。この場にいるすべての皆さんが、この留学で一つでも多くのものを得て、皆さん自身の人生を成功に導いていくことを切に願ってやみません。
本日は、ご入学、本当におめでとうございます。
(今日、取り上げた言葉は、1月4日の朝日新聞夕刊に載っていた言葉です)
Posted by KCP

